【特集インタビュー】Little Bird 吉田圭佑さん「自分の可能性を 拡げてくれるメソッド」

「フェルデンクライスメソッド」ってご存じですか? 体を動かすレッスンですが、筋トレやストレッチのような労力や痛みがないのに、体の疲労や痛みが改善し、思考にまで影響があるというから驚きです。今回はLittle Bird主宰の吉田さんに、このメソッドについてお話を伺いました。

自分の可能性を拡げてくれるメソッド

―フェルデンクライスメソッドとは何ですか?

吉田 子どもからお年寄りまで、体の負担なくどなたでも受けられるワークです。物理学博士であるモーシェ・フェルデンクライス博士が創始しました。博士は若い時にサッカーをしていたり、パレスチナの建国作業中に研究したナイフ術の経験を活かして本を出版したり、成年期にはフランスに渡ってソルボンヌ大学で物理学の博士号を取得したり、いろんな才能に恵まれた人物でした。フランスでは、柔道の創始者・嘉納治五郎先生と出会い柔道を学び、ヨーロッパで初めて柔道の有段者にもなりました。その後、第二次世界大戦の戦火に追われ、フランスからイギリスに移って潜水艦に関する仕事をしていたところ、滑って膝に大怪我をしてしまいます。反対の膝も若いころにサッカーで大怪我をしていたので、医者には「手術して治っても、歩けるようになるのは難しい」と言われて。そこで手術をせず、体の使い方を変えることで再び自分の足で歩くことができるように、いろいろ探索し始めたそうです。ヨガや神経生理学、柔道の動き、赤ちゃんのように筋肉に頼らずに動く方法、アレクサンダーテクニークなど、いろいろ研究するなかで自分の方法を開発し、また立って歩けるようになります。その方法を深めた結果、フェルデンクライスメソッドが生まれました。

―どのようなメソッドなのでしょうか?

吉田 人間が普段生活する上でしている動きって、だいたい習慣化していますよね。たとえば歯をみがくときや物を手で取るとき、立ったり歩いたりしゃがんだりという生活動作も、無意識にしているじゃないですか。そうやっていまのみなさんの生活に必要な動きだけを続けていると、慢性的な疲労や関節の痛み、不具合が出たりする。それを改善するために、筋肉を鍛える、ストレッチする、マッサージするという方法を選ぶ方もいると思います。でも、このメソッドの場合は動きのパターン自体を変えてしまうんです。たとえば座った状態で前にある物を取るときに、手を伸ばして取ろうとすると、背中が丸まりますよね。それを、骨盤を少し前に動かすとか、おなかを前に出しながら取るとか、別の動きを提案するんです。そんな風に、まずは自分が無意識にしている生活動作を顕在化させてから、より有効性の高い動きを一緒に探索していきます。

―“新しい習慣を作る”みたいなことですか?

吉田 そうですね。人間って選択肢ができて初めてより良いものを選べるようになりますが、選択肢すらないと、今の自分の動き方に固執するしかなくなってしまいます。私たちの仕事は、動きの選択肢を提示していくことなんです。

座った状態で目の前の物を取る場合にも、いろいろな体の動かし方がある。一例をみせてくれる吉田さん

動きを楽にすることで 新しい思考が増え、生活を豊かにする

―レッスンの内容について教えてください。

吉田 2種類のレッスンがあります。ひとつは、複数人のグループで行う「ATM」。有資格者であるプラクティショナーの声かけに基づいて動きます。自分の体のあらゆるところに意識を向けながら、自分に最適な動きを見つけていくレッスンです。もうひとつが、1対1で行うパーソナルレッスン「FI」。プラクティショナーがクライアントのお悩みや希望をよく聞いた上で、寝たり座ったりしてもらいながら手で触れて、筋肉と脳のつながりに新しいパターンが形成できるように動きを探索していきます。筋トレやマッサージ、ストレッチなどとは違い、強く押したり伸ばしたりすることがないので、体の負担なくどなたでも受けていただけます。

―筋トレやストレッチなどとアプローチ方法が違うところが面白いですね。

吉田 体を使ったレッスンって“ノーペイン、ノーゲイン(痛みなくして、得るものなし)”というイメージが主流だと思いますが、このメソッドは“レスペイン、モアゲイン”。最小の努力でいかに最大の効果を発揮するか、なんです。努力を減らすほど余力があるので、まわりにもっと目が向くようになったり、新しい思考が出てきたりする。動きを楽にすることで生活を豊かにしましょうという考えが、このメソッドだと僕は思っています。

―思考にまで影響があるんですね。

吉田 モーシェによると「動き、感覚、感情、思考はつながっている」と。動くことによって感覚があって、感覚があるから感情が出てくる。そして思考が生まれて、また動く。だから心と体は分けず、一緒だと考えています。そのなかで唯一目に見える“動き”に僕たちはアプローチしているんです。自分もそうでしたが、レッスンを受けてくれた方にも言われるのが、体を楽に、自由に動かせるようになることで自信が出て、自分にはもっといろんな可能性があると思えるようになった、ということです。極端にポジティブになるわけでもなく、自分の弱い面も嫌な面も含めて自分だと認めながら、現実的にできる方法を探せるようになります。だから感情に波があるときも、ニュートラルな状態で自分を客観視できる。自分のホームができるイメージです。動きで思考まで変わるって、面白いですよね。

写真の群馬の会場や前橋市朝日町のデイサービス「カルマスタイル」のほかオンラインでもレッスンが可能。詳細はWebサイトをチェック

フェルデンクライスと出会った 20代のころの吉田さん

―なぜこの資格を取ろうと思ったのですか?

吉田 立ち技格闘技をやっていた20代前半、筋トレに励んでいたらすごく体が痛くなってしまって。改善しようといろいろ調べる中で、フェルデンクライスメソッドの本に出会いました。そこで初めてレッスンを受けに行ったら、信じられないぐらい腕が軽く上がるようになって驚いたんです。そこからしばらくレッスンは中断していましたが、仕事のことや今後のことについて悩んでいた20代後半に、ひどい腰痛に見舞われて。そのときにふと思い出して、久しぶりにフェルデンクライスのレッスンを受けに行きました。そうしたら、腰は痛くなくなるし、目もよく見えるし、それまでにあった悩みまでなくなって、心と体に大きな変化を感じたんです。そこからとても興味がわいて、4年間のトレーニングプログラムを受けてプラクティショナーになりました。実際のレッスンでは、高齢者の歩行訓練や立ちしゃがみの訓練に取り入れてもらったり、指の動きを改善したいギタリストの方が指の引っかかりなくスムーズに動かせるようになったりしています。1000種類近くあるレッスンを意訳しながら人に教えたりすることが、いまでも楽しくて仕方ないですね。

吉田圭佑(よしだ けいすけ)さん
Aus tab認定フェルデンクライスプラクティショナー、管理栄養士。高崎健康福祉大学卒業後、同大学に管理栄養士として勤務。フェルデンクライスメソッドとの出会いを機に退職し、プラクティショナーの資格を取得。2013年から高崎の会場を拠点に全国各地への出張レッスンを通してメソッドを実践している

Little Bird

群馬県前橋市元総社町151-5コーポ大渕502

080-1354-5871

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リトルバード 動きを通して自己発見する喜び フェルデンクライスメソッド

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