【特集インタビュー】手紙社・代表 北島 勲さん/「いま、前橋が面白い」前橋に手紙舎をオープンしたわけ

「東京蚤の市」や「もみじ市」、「紙博」、「布博」など、多くのイベントを手がける手紙社。先月、前橋市千代田町に「イラストとビールとサンドイッチ 手紙舎 前橋店」をオープンしました。なぜいま、前橋に手紙舎を作ったのでしょうか? 手紙社・代表の北島 勲さんにお話を伺いました。

「いま、前橋が面白い」前橋に手紙舎をオープンしたわけ

−−3/2に「手紙舎 前橋店」がオープンしましたが、お客さまの反応はいかがですか?

北島 今日でオープンから3日目ですが、初日、2日目はサンドイッチが完売で、非常に好評でした。

−−前橋店には外からドリンクやフードを購入できるスタンドがありますが、立ち寄りやすくするための工夫でしょうか?

北島 前橋店は、ほかの手紙舎の雰囲気とは少し違うんです。街に開いているほうがいいと思って、なるべく明るく、風が通るような造りにしました。店の形がシンプルな四角形だから、店づくりが難しいんですよ。実は、柱があったり、四角形ではない変形のほうが、空間に変化が出るから作り込みやすい。この奥には何があるんだろう? と思わせるくらいのほうが、人ってわくわくするような気がするんですよね。

−−作家さんたちが手がけた250種類以上の包装紙をバイキング形式で手に取ることができるコーナーは、変化があって面白いと思いました。

北島 包装紙のコーナーは前橋店の売りのひとつですね。東京の店にはないものなので。

地下1階にはイラストを用いた雑貨がずらりと並ぶ。壁沿いの棚が包装紙をバイキング形式で手に取ることができるコーナー

−−なぜこの場所にオープンしたのでしょうか?

北島 中央通りはかつて、前橋の賑わいの中心だったんです。いまも前橋の新たな街づくりの拠点になっていると感じます。前橋店の2階にはMMA(前橋まちなかエージェンシー)があるし、少し歩けばおいしいドーナッツ屋さんやおしゃれな花屋さんがあって、若い人たちが頑張っているイメージがある。白井屋ホテルができてからの前橋は本当に面白いし、街を歩いていてもわくわくするんですよね。前橋はいま、新たな盛り上がりをみせているいいタイミングですし、一緒に神輿を担ぎたいと思い、出店を決めました。

−−前橋は北島さんの地元でもありますしね。

北島 地元を盛り上げたい気持ちが強いですね。そのつながりのおかげで、物件探しから人材採用まで、いろんな方に協力してもらうことができました。

−−人材採用も順調だったのでしょうか?

北島 ひたむきで真面目ないい人たちを採用することができたのでよかったです。でも、最初は苦労しましたよ。2022年5月にオープンした前橋市広瀬町の事務所メンバーの採用には4、5ヵ月かかったので。見つかるまでは、群馬にいる手紙社の“部員”(*)さんに仕事を手伝ってもらいました。

クラフトビールやサンドイッチなどを購入できる1階カウンター

“やらないこと”に誠実でいること 手紙社の世界観の作り方

−−手紙社はブランディングが上手ですよね。

北島 手紙社のメンバーにもよく言うんですが、ブランディングって、言葉を変えたら“やせ我慢”みたいなものですから。何をやるかということより、“やらないこと”に誠実でいることが大事だと思います。「本当はやりたいけどやらない」という選択をすることの積み重ねで、世界観が作られると思っているので。前橋店にも、東京の手紙舎のように本当は器や手仕事のものも置きたいんですが、いまは何かに特化しなければだめだと思っているから、あえて“イラストとビールとサンドイッチ”というキーワードにしています。“やせ我慢”することで、特色を出さなければいけないなと。

−−特化することで、それぞれのお店のコンセプトに特色を出しているのですね。

北島 コンセプトだけではなく、什器やテーブルも「これは置かない」とか、知り合いの紹介や売れるからという理由で「手紙社の世界観とは違う商品は扱わない」とか。手紙社のメンバーには“やらないこと”を見極める目を養ってもらいたいので、それを教えるのが自分の仕事です。「じゃあ世界観に合うのはどんな作家さんですか?」ってよく聞かれるんだけど、「手紙社の世界観に合っていて、クオリティの高い人」としか言いようがないんですけどね。

−−今後もお店を増やすご予定はありますか?

北島 しばらく店づくりはお休みします。オリジナル商品を作って、オンラインショップを含めて販売していく。いまやるべきところはそこですね。

−−手紙社と言えば、もみじ市や蚤の市、紙博などのイベントを挙げる方も多いと思います。イベントにも注力していくのでしょうか?

北島 2019年は大型イベントを各地で13回開催しました。2020年は14回予定していましたが、新型コロナウイルスの流行で2回しかできなかった。2021年なんて0回でした。そんな時、イベントチームにオンライン事業をやってもらって何とか生き延びた経緯があるので、やっぱり稼ぎ頭はイベントなんだけど、イベントに頼る経営からは脱さなければいけないという気持ちが強いです。なので、いまはオンライン事業にも力を入れています。

店内のいたるところに絵が飾られている

東京・調布市の本社に続く、手紙社第二の拠点としての前橋

−−広瀬町の事務所に続いて前橋店を開設されましたが、手紙社にとって前橋は、東京の本社に続く第二の拠点になりつつあるのでしょうか?

北島 そうですね。東京でイベントを担当しているチームも、いずれは前橋に移してもいいなと思うくらい、手紙社の拠点として捉えています(笑)。前橋と東京は近いですから。それにイベント自体も、東京以外に関西や福岡など全国でやっているので、東京にチームがあることにこだわらなくてもいいのかなと考えています。リモートで仕事もできる時代ですしね。

−−東京のメンバーが前橋を訪れる機会も増えそうですね。

北島 全社員が集まるミーティングが3、4ヶ月に1度あるんですが、先日も総勢37人、前橋の事務所に来てもらいました。そのあと、白井屋ホテルでは代表の矢村さんにホテルの中を案内してもらったり、前橋店の周辺を巡ったり、2階のMMAでワークショップをしたりして。そのような機会がないと、全員が顔を合わせることってほとんどないですから。そうやって1年に何度か交流して、みんなの目線を合わせるようにしています。

−−前橋に新しい拠点ができたことについて、手紙社のみなさんの反応はいかがですか?

北島 社員も楽しそうですね。地方に仲間ができたり、行ける場所ができたりするからなのかな? だから今後、前橋の事務所やお店、昨年オープンした「手紙舎 文箱(松本店)」で働きたいというメンバーが出てくるといいなと思っています。

*部員…“部費(月額料)”を支払うことで、手紙社が提供するプログラムに参加できたり、手紙社主催のリアルイベントへ優先的に入場できたりと、さまざまな特典を受けることができる仕組み。

北島 勲(きたじま いさお)さん
1967年生まれ、群馬県出身。会社員時代に雑誌編集長を歴任。独立後、編集チーム「手紙社」を立ち上げる。さまざまなジャンルの作り手が集う「もみじ市」や、古き良きものを愛する人々の祭典「東京蚤の市」などの人気イベントを全国各地で開催。イベントのほか、カフェや雑貨店、書店など、国内で7店舗、海外で1店舗を経営

イラストとビールとサンドイッチ 手紙舎 前橋店
群馬県前橋市千代田町2丁目10-2 comm 1F-B1
027-212-8183
<営業時間>
1F ビアスタンド 11:00〜20:00(19:30L.O.)、B1F 雑貨店 11:00〜18:30
<定休日>
月、火  *祝日は営業(翌日振替休)

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