【特集インタビュー】前橋市 にぎわい商業課・田中隆太さん「まちなかと人をつなぐ マチスタントの仕事」

「前橋のまちなかで、何かやってみたい」。そんな想いを手助けしてくれる存在が前橋市にはいます。その名は「マチスタント」。前橋市役所職員である「マチスタント」の田中隆太さんに、「マチスタント」の仕事について話を伺いました。

まちなかと人をつなぐ マチスタントの仕事

-最近、前橋でお店をオープンした方たちから「前橋市役所にお勤めの『マチスタント』の田中さんが、街づくりを盛り上げてくれている」とたびたび伺います。田中さんはもともと何をされていた方なのでしょうか?

田中:僕は新潟県の三条市出身で、前橋工科大学への進学をきっかけに前橋に来ました。卒業後は7年間、都内にある内装施工会社で現場監督をしていたんです。いまは「マチスタント」として「前橋まちなか」の不動産などの既存資源と、「まちなか」で何かやってみたい人をつなぐ仕事をしていますが、一緒に店の物件探しをする中で「ここは飲食店に向いている」、「ここから配管が出ているから工事費用はそんなにかからない」などの見立てができるのは、前職の経験があるからですね。

-そこからどのような経緯で「マチスタント」になったのですか?

田中:前橋は妻の地元なので、ここで子育てをしようと思って戻って来ました。前職もすごく好きでしたが、昼夜問わず働きづめだったので、家族と過ごす時間を増やすために前橋市役所に入庁したのが9年前です。大学の時は街づくりをテーマにした研究室にいたくらい、もともと街づくりには興味がありましたが、「街づくりがしたい」という高い志を持って市役所に入ったわけではありませんでした。

「マチスタント」のロゴやイラストはshimamura maiさん、コピーライティングはONOBORI3が手がけた

街づくりに関わるようになったのは、市街地整備課という部署に異動してからです。そこで「前橋市アーバンデザイン」という街づくりの指針を作るために、よく「まちなか」に行くようになりました。「まちなか」には、イベント広場でいろんなイベントを企画している面白い人たちがたくさんいて。イベントというと“イベント会社がアルバイトのイベントスタッフを雇って開催”というイメージがありましたが、「まちなか」のイベントはそうではなく、顔が見える関係の人たちがみんなで楽しそうにやっているのがいいなあと。そういう人たちにうまく使ってもらえる計画にしたいと思って、民間の方々と一緒になって「前橋市アーバンデザイン」を作っていきました。市街地整備課にいたのは4年ほどでしたが、その時の動きが「マチスタント」の前段になっています。

―当時はまだ「マチスタント」という呼び名はなかったんですね。

田中:当時は「『リノベーションまちづくり(*)』という、全国的に広がっている動きを『前橋版リノベーションまちづくり』としてやっています」と説明していました。でも、そう言われてもあまりピンとこないと思ったので、よりみんなにわかりやすく、且つ親しみやすい存在になれるように、街のアシスタントから「マチスタント」という言葉が生まれました。

「マチスタントをしていると、本当に素敵な出会いばかりです」と語る田中さん

一緒に街歩きをしながら 前橋の面白さを伝えていく

―具体的にどのような活動をしていますか?

田中:店づくりを考えている人の話を聞いたり、時間が許す限り市内を一緒に歩いて、いま前橋でやっている素敵なお店の案内をしながら「このエリアでこんな空き物件があるよ」という話をしたりしています。街歩きの時は僕と相手だけで話をせずに、なるべく街の人たちにも入ってもらうようにしています。たまたま会った人に「今日はどんな人と一緒に歩いているんですか?」と聞かれて、「こんなお店をやりたいと思う」という話をすると、「そういうお店があったらいいなって思っていました」みたいに話が広がったりするので。ほかにも、補助金や手続きなどの概要を僕がざっくりと説明して、詳しく知りたい時には担当者につなぐ役まわりもしています。市役所が店を出したい人と一緒に店づくりを考えることで、僕たちも店づくりの大変さがわかるし、話を聞くことで少しでも楽になったらとか、些細なことでも何か関われたらいいなという気持ちでスタートしました。

-より街中で事業を始めやすくなったということですね。お店作りにはお金がかかるし、手続きも細かくて大変だから、「マチスタント」が行政との駆け橋になってくれると、出店する側はとても助かると思います。

田中:ほかの地域にも、陰では「マチスタント」のような動きをしている自治体や人がいると思います。でも、前橋市はオフィシャルな業務として「マチスタント」を後押ししているところが面白いですよね。

田中さんが「前橋まちなか」を歩くと、街のいろんな人が声をかけてくれる

「前橋面白いね」という動きが なだらかに上昇し続けてほしい

-「前橋市アーバンデザイン」を作ってから、マチスタントの取り組みによりお店はどのくらい増えましたか?

田中:約20軒です。街の変化を伝えるためにはどうしても「お店がいくつできました」という表現になってしまいますが、僕の中では店舗を増やしたい、業績を上げたいというよりは、「マチスタント」の支援で喜んでくれる人を増やしたい、「まちなか」に居場所を作りたいと思っていて。それで常連の人と仲良くなったり、若い人たちのコミュニティの場ができたりしていったらいいなと思っています。

-今後の街づくりについてお聞かせください。

田中:僕は「『前橋市アーバンデザイン』の指針のようになればいいな」ぐらいにしか思っていないんです。そこに向けて動いていれば、僕は別にどんな形でもいいと思っています。なので、いま活躍している人たちや、街に想いを持っている店主の素敵なお店がずっとあり続けることと、それに感化されて前橋に来てくれる人や、お店をやりたい、住みたいという人が増えて、いまの「前橋面白いね」という動きが、なだらかにずっと上昇していけばいいなと。例えば前橋がぐんとバズって「とりあえず前橋に出店しておこう」というふうにあまり検討せずに出店してしまうと、「飽きたなあ」、「思っていた前橋と違う」ということになりかねないので。お気づきの通り、前橋は「盛り上がっている」と言いながらも、街を歩いている人はまだまだ少ないです。でも、前橋に何度も通って街のコミュニティを知った先に面白さがあると思うので、前橋をよく知ってもらった上で来てくれる人が増えるといいなと思っています。

*リノベーションまちづくり…いまある資源(不動産などの空間資源や人的資源、歴史的資源など)を活用し、自治体の都市・地域経営課題を解決していくこと

田中隆太さん
新潟県三条市出身。前橋市役所職員。前橋工科大学卒業後、東京の内装施工会社に就職。お子さんの誕生を機に前橋に移住し、現職に。前橋の街づくりの立役者と言われている

マチスタントへのご相談は、前橋市ホームページのにぎわい商業課お問い合わせフォーム、もしくはインスタグラム(@machistant)へお送りください

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