【特集インタビュー】大和屋 代表取締役・平湯 聡さん「自家焙煎コーヒー店の先駆け『大和屋珈琲』の魅力とは」

平湯 聡さん(ひらゆ さとしさん)
1980年群馬県生まれ。
大学卒業後にコーヒー生産国であるブラジルとグアテマラに渡り、現地の農園にて約2年間住み込みでコーヒー修行に没頭。
帰国後、コーヒー専門商社にて研修し、株式会社大和屋へ入社。
2020年に創業者で現会長の平湯正信氏から代を継ぎ、2代目代表取締役となる。
ブラジル・サントス市商工会認定コーヒー鑑定士。

自家焙煎コーヒー店の先駆け
「大和屋珈琲」の魅力とは

-大和屋のこれまでの経緯について教えてください。
平湯:大和屋は1980年に上並榎町で7.25坪の小さな店舗からはじまりました。現会長が大和屋を創業し夫婦ふたりでお店を営んでいました。コーヒーは今でこそ、どこでも手に入れることはできますが、その当時はコーヒー豆を購入できるお店もごくわずかだったそうで、コーヒー豆を買って自宅で挽いて飲んで楽しむという習慣はあまりありませんでした。そんな時代に自分で焼いたコーヒー豆を量り売りする店を始めたので、全国でも自家焙煎コーヒー店の先駆けでした。会長は前職でコーヒー会社に勤めていたことで、コーヒーに関するノウハウがあり、自身で焙煎したコーヒーをお客さまに振る舞っていたところ、美味しいと評判になり、コーヒー豆の販売が次第に大きくなっていきました。また、会長は骨董品が好きだったので、収集したアンティークのコーヒーカップやコーヒーミルなどを店内で飾っていたところ、お客さまから「これ買いたい」というお声が多くなり、コーヒーカップの販売を始めたそうです。その後、益子焼や信楽焼といった全国各地の産地から買い付け、取り扱う商品アイテムも多くなっていきました。
-「大和屋」のこだわりとは何でしょうか?
平湯:ひとつは「和の珈琲」というこだわりがあります。もともとコーヒーは、ヨーロッパやアメリカなどの欧米から日本へ伝わってきたもので、「洋」のイメージがある嗜好品かなと思います。しかし、「もっと日本ならではのコーヒーの飲み方があるのではないか?日本人の味覚に合ったコーヒーを作りたい」という創業時の考えから、「和の珈琲」を表現したい、思いがあります。分かりやすく言えば、カタカナの“コーヒー”ではなく、漢字で書く“珈琲” をかたちにしたいということでしょうかね。「和の珈琲」を一番端的に表現しているのは「木炭焙煎珈琲」でしょう。いわば、炭焼きコーヒーです。大和屋は創業より炭を使った焙煎にこだわっています。それは、「魚やお肉をガスで焼くより、炭で焼いた方がおいしい。日本人には炭焼きの嗜好性があるから、コーヒーも炭で焼いた方がおいしく感じるはずだ」との発想から炭焼きコーヒーにこだわり、大和屋では「木炭焙煎珈琲」と名付けています。「和の珈琲」を店舗の内外装や商品のデザインで表していることで、お客さまへほっと和む雰囲気を提供できているのではないでしょうか。

炭焼きの遠赤外線の効果でふっくらと焼きあがったコーヒー豆

コーヒーを五感で楽しむ新しい「大和屋」
「前橋六供店」が10/26オープン!

-それぞれのお店の魅力や特色は何ですか?
平湯:
「高崎本店」は「大和屋」を象徴する店舗で、「和の珈琲」をかたちにするために、会長がひらめき古民家をイメージして作りました。その場所に古民家があったわけではなく、実際に使われていた梁や柱などの古材を使って、はじめから建てました。「YAMATOYA COFFEE 32」は、県のプロポーサル公募で採択され2020年10月にオープンしました。県内で一番高い建造物である県庁の最上階にあるので、「最高の眺望で、最高の珈琲を」をコンセプトにしています。こちらではカフェとして飲食を主で取り組んでいます。

10/26に開店したばかりの「前橋六供店」の店内。1階ではコーヒー豆やうつわ、お菓子などを販売している
広い窓と吹き抜けで開放感がある2階のカフェスペース

平湯:先日オープンした「前橋六供店」は、「大和屋」のこだわりや、残すべき価値を継承しながら、時代に合わせた新しい店舗づくりをしました。「前橋六供店」のようにひとつの店舗に物販とカフェの機能を併せたのは初めての取り組みであり、新しいチャレンジでもあります。カフェを併設することでコーヒーの専門性をより高め、一人ひとりに合ったコーヒーを提案していきたいと思います。商品販売だけでなく、2階のフリースペースで焙煎教室やコーヒーのワークショップなど実店舗でしかできないイベントをこれから企画していきます。さまざまな体験を通して、コーヒーの魅力や楽しみ方を伝えていきたいですね。

お客さまに技術や知識を提供することもサービスのひとつ。そのためスタッフの育成にも力を入れているそう

「大和屋」が提供してきたもの
それは、コーヒーのあるライフスタイル

-取り扱っている商品についてお聞かせください。
平湯:
店頭では常時40種類近くのコーヒー豆を扱っています。コーヒーといっても、酸味のある軽い味わいもあれば、深煎りのコクのある味わいもあります。産地や銘柄によって味の特徴は異なり、焙煎の方法でも味の違いは出てきます。酸味が好きな人もいれば、苦みを好む人もおられます。どれがおいしいか、味わいの好みは人それぞれで十人十色です。
また北海道から沖縄まで全国各地の陶磁器を販売しています。産地や窯元によって、土が違い、作られる技法が異なります。ひとくちにコーヒーカップと言ってもさまざまな形・大きさ・デザインがあります。その中でお客さまが「私はモカが好き」と、好みのコーヒーを選ぶように、気に入ったカップを選んでコーヒーを飲むと、さらにおいしく感じるのではないかなと。「和の珈琲」を日本のうつわで楽しんでいただきたいという想いがあります。
さらに全国から取り寄せたこだわりのお菓子も多数取り扱っています。ブラックでコーヒーを飲むのもコーヒーの楽しみ方ですが、お菓子と一緒に合わせるとコーヒーをもっと楽しむことができます。例えばドライフルーツには酸味系のコーヒーを、ミルクチョコレートにはコク系のコーヒーといったようにペアリングによって、また違った味わい方ができるでしょう。
コーヒー豆、コーヒーを飲むためのうつわ、コーヒーに合うお菓子。創業より扱ってきた商品から今までの歴史を紐解くと、自宅でコーヒーを楽しんでいただける「珈琲のあるくらし」を提案してきたのかなと思います。それが「大和屋」のもう一つのこだわりであり、大切にしたい会社の価値観になります。コーヒーも陶磁器も実に多種多様であり、その好みもさまざまです。一人ひとりに寄り添いながら、それぞれの好みに合ったコーヒーの楽しみ方を提案してきました。日々のくらしの中でコーヒーを楽しんでいただけるお手伝いをしてきたのかなと思います。

全国の焼き物の産地から、コーヒーに合ううつわを仕入れて販売する「大和屋」

-ホームページのコンテンツも読み応えがありますね。
平湯:
今はSNS全盛期ということで、ネットでもいろいろと情報発信しています。つくづく思いますが、コーヒーって“底なし沼”なんですよ。お米が銘柄によって甘みや粘り気、粒の大きさが違うように、コーヒーも品種によって味も違えば、粒も違う。標高や降水量、日当たり、土壌の質などの栽培環境や、ナチュラル、ウォッシュドなどの精製方法、ワインの技術を応用したアナエロビックという発酵方法など、作り方にはいろいろありますが、作り方が違えばコーヒーの風味・特性も当然違ってくる。焙煎は焙煎で、同じ豆を浅煎りで焼くのか、深煎りで焼くのか、どれくらいの熱量と時間をかけて焼くのかによって味がガラリと変わりますし、豆の焼き方も、一般的にはガスや電気を使いますが、うちでは木炭を使って炭焼きするなど、いろいろあります。抽出方法だって、サイフォン、ペーパードリップ、ネルドリップなどさまざまで、そういった抽出器具によっても味は変わってくるわけです。だから、コーヒーって“底なし沼”だなと思うんですよ。何が言いたいかというと、いろいろな要素が組み合わさって1杯のコーヒーになっているので、自分の理想とするコーヒーを探求し始めると、本当にたくさんの選択肢があると。そういったところを小難しくしてしまうと敬遠されてしまうかもしれないので、「大和屋」ではいろいろな方法で情報発信することで、コーヒーを身近に感じながら、その奥深さや面白さを知ってほしいと思っています。
コンテンツには、ホームページの「大和屋手帳」のほかにも、オウンドメディアとして「ディープ」とメディアを意味する「プレス」、「エスプレッソ」の3つをかけて「deepresso」という名前のコンテンツがあったり、毎月第1水曜日の17:15から、ラジオ高崎で同じく「deepresso」という番組名でコーヒーについて語っていたり、今年1年間は上毛新聞でも珈琲にまつわる記事を書いたりしています。いろんなコンテンツがありますが、どれもコーヒーの沼の部分を面白く、分かりやすく伝えたいなという想いでやっております。

和の珈琲にこだわる「大和屋」が
見据える未来について


-おすすめの商品は何ですか?
平湯:
初めて来店された方には「大和屋ブレンド」をおすすめしています。バランスの取れた、創業から変わらない定番の味わいです。また10月25日から、ルワンダのコーヒーを数量限定で販売しています。今年の6月に実際に現地を訪問し、特別なロットを買い付けてきました。アフリカにあるルワンダという国はあまりなじみがありませんが、高品質なコーヒーをつくる生産国として今注目されています。アプリコットのような甘酸っぱい風味があり、なめらかで飲み心地のいい印象です。今年いちおしのコーヒーですので、ぜひ試してみてください!「カフェチョコ」は皆様から支持いただいているロングセラー商品です。木炭焙煎珈琲をチョコレートに練り込みコーヒーの風味が感じられるチョコレートです。コーヒーとの相性もピッタリで、お酒とも合いますよ。11月15日より「カフェショコラサンド」を新しく販売します。珈琲チョコレートクリームをグラノーラ生地でサンドして、食感がおもしろいお菓子です。カフェのメニューでは、「前橋六供店」限定の「チャコールラテ」がおすすめですね。竹炭(チャコール)と黒みつ、黒ごまを入れた真っ黒なカフェラテです。「前橋六供店」の外壁は焼き杉を使っているので、そこからヒントに真っ黒なメニューをつくってみましてみました。

「大和屋ブレンド」(左)と「前橋六供店」限定の「チャコールラテ(ICE)」(右)
オリジナルのチョコレート「カフェチョコ」

-「大和屋」の今後の展望をお聞かせください。
平湯:
コーヒーの焙煎にはガスや電気を使うのが一般的です。大和屋のように炭で焼いているコーヒーは日本には数少なく、海外にはありません。「和の珈琲」として、これから大和屋の木炭焙煎珈琲をもっと多くの方々に知っていただけるよう、魅力をどんどん伝えていきたいです。ぜひ世界に向けて発信していきたいなと思っています。カフェの本場であるウィーンやパリ、あるいはサンフランシスコで大和屋の「ジャパニーズ・コーヒー」がどう評価されるのか、受け入れてもらえるのか、チャレンジしていきたいですね! そしてこれからもコーヒーを通して、皆さまの日々のくらしの中でそっと寄り添える存在でありたいと思います。
-新しくできたシンボルマークも、日本らしさが出ていて外国の方に喜んでいただけそうですね。
平湯:
新しいシンボルマーク「丸に七珈琲」は、「丸に六つ丁子」という平湯家の家紋をもとにして作りました。香辛料のクローブが円状に6つ並んだものが平湯家の家紋なんですが、それをリデザインして、デザイナーさんがクローブの代わりにコーヒー豆を6つ並べましょうと提案してくれて。6つの豆を囲む円も、コーヒー豆に見えるようにしてくれました。だから7つのコーヒー豆で、「丸に七珈琲」。そういったところも海外へ向けて発信できると思うので、「大和屋」の炭焼きコーヒーで、いずれはパリやウィーン、シアトルなどのカフェ文化のメッカにチャレンジしてみたいですね。

シンボルマーク「丸に七珈琲」が目を引く「前橋六供店」の外観

高崎本店
群馬県高崎市筑縄町66-22
027-362-5911  9:30~18:30
Instagram: @yamatoya.takasaki

高崎吉井店
群馬県高崎市吉井町池1479-1
027-320-3210  9:30~18:00
Instagram: @ yamatoya.yoshii

YAMATOYA COFFEE 32
群馬県前橋市大手町1丁目1-1 群馬県庁舎32階
027-221-0032 9:00〜19:00
Instagram: @yamatoyacoffee32

前橋六供店 *10/26 OPEN!
群馬県前橋市六供町5-1-1
027-289-2340 9:00〜19:00
Instagram: @yamatoya.rokku

https://www.yamato-ya.jp

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