【特集インタビュー】ブルースシンガー・HORIKENさん「65歳でデビューした ブルースシンガーの人生」

幼いころから音楽が好きで、20代で仕事にしてから音楽一筋で生きてきたブルースシンガー・HORIKENさん。その活動が実を結び、2020年に65歳でメジャーデビューすることに。デビューに至るまでの道のりについて話を伺いました。

65歳でデビューした
ブルースシンガーの人生

-HORIKENさんは65歳でメジャーデビューなさったんですよね。

HO:そう。ユニバーサルミュージックに誘われて、65歳でメジャーデビューしました。もともとプライベート盤(自主制作)で出していた「徒花(あだばな)は咲いたか」という曲が注目されて、同じ曲でデビューすることになった。デビューは65歳だけど、音楽自体は長くやっているんだよね。

−いつごろからやっているんですか?

HO:音楽に興味を持ったのは小学生のころで、バンドを始めたのは中学生ぐらい。バンドマンとしてちゃんとお金をもらって生活するようになったのは20代前半からかな。そこからはずっとこの生活だね。

−ユニバーサルミュージックからメジャーデビューのお誘いがあったきっかけは何ですか?

HO:俺が高崎公園の近くでやっていたライブハウスに出ていたときに、友達が作曲家の杉本眞人先生を連れてきてくれたことがあって。それを機に「1曲作るよ」と杉本先生が言ってくれてできた曲が「徒花は咲いたか」。インディーズのプライベート盤として2017年に出してから3年くらい経ったころに、杉本先生と一緒にライブで「徒花は咲いたか」を歌ったときの動画がYouTubeでバズって。それをユニバーサルミュージックが見てくれたみたいで、歌詞を書いてくれた女優の烏丸せつこさん(ペンネーム:山口カラス)の紹介もあって「徒花は咲いたか」と「どこへいくの」でメジャーデビューすることになったという経緯。

−再生回数はどのくらいだったのでしょうか?

HO:デビューしたときは50万回で、今は150万回以上再生されているかな。“徒花”という、咲いても実がならない花を人生に置き換えた歌。所詮実らないんだけど、そういう花(人生)があってもいいかなって思う。桜だってあれだけきれいだけど、実はならないもんね。若い子にはなかなか理解しづらい曲かなとは思うんだけどさ。

2020年にリリースした「徒花は咲いたか」(作曲:杉本眞人、作詞:山口カラス/ユニバーサルミュージック)
同世代に向けたメッセージソングが人々の心に響き、楽曲誕生から3年、メジャーデビューに至った

ブルースシンガーと
呼ばれるようになった理由

−HORIKENさんはブルースシンガーですが、ブルースを始めたきっかけは何ですか?

HO:音楽に興味を持ったのは加山雄三さん。加山雄三さんがやっていた若大将シリーズの中に『エレキの若大将』という映画があって、それが俺の“どストライク”だった。それからベンチャーズとかビートルズとか、海外のいろんな曲が日本に入ってきて中学生のころにハマって、イギリス人たちがやっていたブリティッシュ・ブルースを聴くうちに俺らも真似して歌うようになったんだよね。ところがローリング・ストーンズやジェフ・ベック、エリック・クラプトン、レッド・ツェッペリンなどのイギリス人たちがやっていた曲を見ると、「誰々がオリジナルだ」とブルースマンの名前が書いてある。そこで「ブリティッシュ・ブルースはカバーで、本物があるんだ」と気づいた。それで本物が聴きたくなって、黒人が歌うアメリカの本物のブルースを聴くようになるんだけど、最初はちっとも良さがわからなくて。でも、だんだん数を聴くと「なるほどな」って良さがわかってくるんだよね。だから20代ぐらいになってやっと本物のブルースに移行していった。それが自分のベースにあるから「HORIKENはブルースっぽいね」と言われるようになったんだと思う。

−なるほど。いろんなものを吸収していく中で、ブルース色が強くなっていったんですね。

HO:うん。やっぱりブルースが好きだから。例えばシャンソンが好きな人は歌謡曲を歌ってもシャンソンっぽいとか、民謡が地盤にある人は何を歌っても民謡を感じるような。音楽にはいろんなジャンルがあるけど、自分のルーツが出てくるものだよね。

県内や東京のクラブを中心に20代から音楽活動を続ける

たくさんの経験を積むこと
そして飽きずに、懲りずに続けること

−デビューする前後で何か変化はありましたか?

HO:活動が窮屈になった部分もあるけど、いいところもたくさんある。メジャーデビューしたおかげで九州や四国、関西などいろんなところへライブに行って、いろんな人に出会えたしね。「徒花は咲いたか」と「どこへいくの」の2曲が俺をいろんなところへ連れて行って、いろんな人と巡り合わせてくれた。

−小学生の頃からずっと音楽が好きで、20代で仕事にして、65歳でデビューするって夢のような話だと思うんです。夢を追っても途中で諦めてしまう人もたくさんいますから。

HO:夢を追い続けるとかサクセスストーリーとか、そんなきれいな話ではないんだよ。俺はぐうたらな奴だけど、好きなことだけはできるから、「明日はあそこでライブだからあいつに会えるな、じゃあ一緒に酒を飲もう」って、そんなことが楽しくてずっと続けてきた中で、メジャーデビューするチャンスと巡り合っただけなんだよね。

−でも“続ける”って難しいことだと思います。

HO:そうだね。続けられたのはやっぱり音楽が好きなのと、他のことができなかったからかもしれない。会社勤めをして人に指示されたことをするとか、いろんな人の中でうまくコミュニケーションするってことが俺はできないから。バンドって一緒に音を出したら気持ちが良かったり、リズムやフィーリングが合ったりするから、そういうものでつながれる空間が俺には合っていたんだよね。コミュニケーションの手段が違うだけで会社も一緒なんだろうけど、俺は歌や楽器でコミュニケーションするのが好きだったんだ。

−HORIKENさんのようになりたい若者へメッセージをいただけますか。

HO:若いときはいろんなことを経験するのがいいと思う。恋愛したり、人に裏切られたり、苦しい思いもしたりっていうことが音楽にはすごく大事だと思うから。そういう経験から自分の中にいろんなことが生まれるよね。それをせずに過ぎてしまうと、いい感じの音楽にはならない。もちろん楽器も一生懸命練習しなくちゃいけないけど、怖がらずにたくさん経験することが俺はすごく大切だと思う。そしてミュージシャンを目指すなら、いきなり何かすごいことを目指すんじゃなくて、飽きずに、懲りずに音楽を続けること。ミュージシャンを目指す人全員がメジャーになるのは無理だと思うけど、結局は想いの強いやつが残ると思うんだ。まあ、俺もそんな偉そうなことは言えないけどね(笑)。

HORIKENさん(ホリケンさん)
1955年群馬県安中市生まれのブルースシンガー。20代から高崎や前橋のクラブなどを中心に活動。2020年にユニバーサルミュージックによるレーベル「Lighthouse Music」の第1弾新人アーティストとして「徒花は咲いたか」でメジャーデビュー。FM GUNMAでは毎週木曜21:30からHORIKENさんがパーソナリティを務める「HORIKENのサイクリングライブ」を放送中

http://www.horiken001.com
YouTubeチャンネル:@blueshoriken3680
HORIKENさんへのお仕事のご依頼はこちらへ:horiken_blues@yahoo.co.jp

写真:三橋里奈(ライブ写真以外)

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