【特集インタビュー】ツムグ・本橋 豊さん「市民が作るあんこの店 あんこもん」

「弁天通りに、おいしいあんこ屋さんができたらしい」。そんな噂を聞きつけて向かったのは、「陶舗 石渡」の跡地にオープンしたあんこ専門店「あんこもん」。代表の本橋さんに、「あんこもん」誕生の経緯やこだわりについて伺いました。

―「あんこもん」誕生の背景を教えてください。

本橋 僕は前職で中国の街づくりに携わっていたことがありました。でも、街づくりをしながら、どこか一方通行というか、提供するばかりでもったいないと感じていたんです。街づくりって面白いから、本来はそこに住んでいる人たちがもっと関与すべきなのに、と。そんな時、地元の前橋に新しいホテルや飲食店などができて、街が盛り上がっていることを知りました。だったらその盛り上がりに前橋市民も参加できるようにしようと思い、街づくりをしたい人が誰でも参加することができる仕組み「前橋リビングラボ」を立ち上げました。その第1弾プロジェクトのテーマが “あんこで街を元気にする”。そして生まれたのが、あんこ好きによる、あんこ好きのための、あんこ専門店「あんこもん」です。

―なぜ“あんこ”だったのでしょうか?

本橋  “食”がテーマだったら、みんなが親しみやすいと思ったからです。なかでも甘いものは、誰もが関心を持ちやすいテーマですからね。ケーキなどの洋菓子も検討しましたが、ターゲットが限られてしまうので、小さい子どもからお年寄りまでみんなが好きで、多世代で交流することができる “あんこ”にしました。

―お店づくりはどのように進めたのでしょうか?

本橋 僕は前職で商品企画もやっていたので、そのプログラムを子どもや年配の方にも分かりやすいように組み替えて、全12回のワークショップにしました。そのワークショップは、あんこについてきちんと学んで、実際にあんこを炊けるようになってから、みんなであんこの商品アイデアを出していき、最終的に商品化して販売することがゴールになっています。「前橋リビングラボ」の登録者のうち、下は5歳から上は81歳までの幅広い年齢層の方がメンバーとして参加してくれました。全12回のワークショップでできあがった商品を、昨年9月のテスト販売でお客さまに食べていただいたところ、評価が高かったので、テスト販売で出てきた反省点を改善して、6月にやっとお店をオープンすることができました。

伝統的なあんこから新感覚のあんこまで取りそろえた店内。テイクアウト専門

メンバーの意思と想いを込めた「あんこもん」の商品の数々

―「あんこもん」のあんこの特徴を教えてください。

本橋 「前橋リビングラボ」のメンバーが、いろんなお豆や砂糖で炊いたあんこを食べ比べて、どの材料とレシピで作ったあんこが一番おいしいか決めて販売しています。つぶあんは、千代田町の「平野屋米殻店」から仕入れている北海道の小豆「きたろまん」ときび糖を使って甘さを抑えることで、たくさん食べても飽きない味に。逆にこしあんは、しっかりした甘さが特徴の白ザラ糖を使って甘めに作っているので、1つ食べたら満足できる味です。つぶあんは毎日お店で炊いていますが、こしあんは富岡市にある「深澤製餡所」というあんこ屋さんに、メンバーと考えたレシピと材料で作ってもらっています。

―商品はすべて「前橋リビングラボ」のメンバーの方が開発されたんですか?

本橋 そうです。例えばおはぎの「スパイスつぶ」、「スパイスこし」は、メンバーにスパイスを使った料理が得意な出張料理人がいて、「あんこにスパイスを入れたらおいしいと思う」という意見から生まれました。みんなでいろんなスパイスとあんこを組み合わせて食べてみて、つぶあんには山椒、こしあんにはカルダモンにしようと決めて販売しています。「エクレあん」は、「元総社村にある『ルイドール』さんの生地にあんこをはさんだら絶対おいしい」、「じゃあ『ルイドール』さんに相談してみよう」という案から商品化したものです。「のむあんこ」は、参加してくれた5歳の子があんこが大好きで「どうしてもあんこを飲みたい!」と言ったことから、じゃあ作ろうと。その子は「あんこを飲みたい」と言ったので、飲んだ時に“あんこ”と思えることを基準に作りました。そんなふうに、どの商品もメンバーの意思と想いが入ったものになっています。

―「平野屋米殻店」や「ルイドール」など、前橋にあるお店も参加されているんですね。

本橋 「あんこパン」のパンも、下小出にあるパン屋さん「ベッカライカッツェ」に作ってもらいました。街が活性化するためには「あんこもん」だけが繁盛してもだめなので、素材を提供してくれる方も、お店を作る内装業者さんも、すべてローカルファーストでやっています。そうすることで、みんなで一緒に街を盛り上げていくことができますからね。

5歳の「前橋リビングラボ」メンバーが考案した「のむあんこ」300円。
この季節にぴったりのドリンクです

市民による、市民のための街づくりで地元・前橋に貢献する

―本橋さんは前橋のご出身ですか?

本橋 はい。実家は若宮町で絹織物の工場を経営していましたが、親の代で辞めてしまったので、大学卒業後は一般企業に就職しました。ただ、もともと定年まで会社勤めをする気はなかったので、50歳で独立して前橋に戻ってきたんです。人生100年時代ですから、0歳から25歳までは勉強、25歳から50歳までは社会勉強、50歳から75歳までは社会貢献、75歳から100歳までは遊ぶという、人生四半期制でやっていこうと思っています。

―独立後は前橋に戻る以外の選択肢も?

本橋 海外で働こうかなとか、いろいろな選択肢がありました。でも結果的に地元を選んだのは、いま前橋がすごく盛り上がっていることが大きいですね。しかも、盛り上げている人たちが同級生や友人の兄弟など、知り合いばかりで。だったら僕もやってみようと思いました。あと、会社員の時にずっと住んでいた神戸は、市民参加の街づくりが盛んな街なので、僕も神戸デザインセンターでやっていた「デザインで社会課題を解決しよう」というプロジェクトに参加していたんです。前職や神戸でやっていたことと、タイミング、前橋を仲間が盛り上げていることが相まって、Uターンを決断しました。僕の同級生にも東京や世界で活躍している人たちがけっこういるので、そういう人たちが僕を見て「Uターンするのもいいかも」と、あとに続いてくれたらいいですね。

−今後のご予定があれば教えてください。

本橋 “あんこ”の次は“惣菜”ということで、「惣菜マダム」というプロジェクトを進めています。1年から1年半後には前橋市内のどこかでお惣菜屋さんをオープンできると思いますので、お楽しみに。

つぶあん、こしあん、ゆず、しそ、スパイスつぶ、スパイスこしの
6種のおはぎが楽しめる「おはぎアラカルトセット」は手土産にもおすすめ。
つぶあん、こしあんが3個ずつ入った「つぶこしセット」も人気です

プロフィール:本橋 豊さん
群馬県前橋市出身。大手電機メーカーの宣伝部で25年間勤めたのちに独立し、2022年ツムグ合同会社を創業。同時に、市民が気軽に楽しく街づくりに参加できる仕組み「前橋リビングラボ」を立ち上げ、メンバーを募っている

あんこもん
群馬県前橋市千代田町3-4-7
027-212-7090
定休日:水、8/16〜18、年末年始
https://ancomon.com

8月12日(土)~15日(火)のお盆期間中、おはぎセットを販売いたします。
つぶこしセット、アラカルトセット 各1,500円
1日100セット限定(10:00~50個、13:00~50個販売)

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