【特集インタビュー】JAMCOVER・オザワリエさん「かわいくておいしい 雑貨とおやつの村」

青、赤、緑の三角屋根のかわいい外観に誘われて中に入ると、珍しい雑貨や、丁寧な手仕事を感じる品、カラフルな子ども服、おいしそうなお菓子が並んでいます。ここは「JAMCOVER VILLAGE」という小さな村。店主のオザワさんに「JAMCOVER」についてお話を伺いました。

かわいくておいしい 雑貨とおやつの村

―「JAMCOVER VILLAGE」はどんなお店なのでしょうか?

オザワ 雑貨とおやつのお店です。雑貨は世界中からかわいくて素敵なものや、珍しいものを集めているほか、日本の作家さんと一緒に作って販売もしています。おやつは、かわいくておいしいものを販売したいので、全国から探したり、「焼き菓子研究所」として自分たちで作ったりしています。かわいいもの、おいしいもの、どちらかだけのおやつならありますが、両方ってあまりないと思うので。

―おやつのパッケージデザインなどもオザワさんが手がけていらっしゃるそうですね。雑貨店で販売している子ども服もオリジナルだと伺いました。

オザワ オリジナルブランドの子ども服は「petit jam」という名前で外部の方と一緒に作っています。「petit jam」名義で文房具や陶器を作っていたこともありました。

「petit jam」の子ども服は普段づかいはもちろん、出産祝いにもおすすめ

―2017年に現在の場所に「JAMCOVER VILLAGE」をオープンされましたが、どのような経緯でこちらに“村”を作ったのでしょうか?

オザワ 以前は東京と高崎市の街中にある古い建物でお店をやっていましたが、建物の老朽化と、“村“をずっと作りたかったことから、2店舗を統合して新たに「JAMCOVER VILLAGE」を作ることにしました。今度は街中ではなくカントリーサイドに作ろうと思い、私の出身地でもある榛名町で4年ほど土地探しをしていたところ、もとは田んぼだった1000坪の土地が出たので購入し、整地して建てたという感じでしたね。“ここから先は非日常だ”と感じられるようなエリアの手前にお店があったほうが、わざわざ東京や県外から来てくださる方もおもしろいと思ったので、この場所に。せっかくお客さまにここまで来ていただくのならば、いくつか楽しめるものがあったほうがいいなということで、敷地内には雑貨店やおやつ店があります。本当はカフェもあるといいと思って設計はしていたんですが、コロナ禍になったので厨房にしちゃったんです。厨房を使ってチョコレートを作ったり、コーヒーを焙煎したりして、おやつ店らしいことをやったらいいんじゃないかと思って。もうひとつある厨房では、おやつ店で販売している焼き菓子やケーキをパティシエが作っています。

取材時に開催されていたイベント「ネコとオチャツ」にちなんで店内で焼かれたクッキー

28年間続いているのは「辞める」選択肢がないから

―村を作るという構想はいつごろからお持ちだったのでしょうか?

オザワ 東京の下北沢で1995年に「JAMCOVER」をオープンして、2店舗目の高崎店を2008年に作ったときに「村を作りたい」と知り合いに言ったのを覚えているので、10数年前には構想があったんだと思います。そもそも、高崎にお店を出す気はなかったんですよ。高崎に帰ってきたときにたまたまおもしろい建物を見つけたので、大家さんに「もし空くことがあったら教えてください」と言って名刺を渡したら、「雑貨店が入ってくれたほうがいいから、前の人には出ていってもらった」と連絡が来て(笑)。借りることになってしまっていたので、高崎店をオープンしました。でも、結果的にそれがよかったと思っています。群馬の方って、若者からおばあちゃんまで “かわいいものリテラシー”みたいなものが高い方や、こだわりを持っている方が多いから、おもしろくて。あと、都内はお店がたくさんあるので、一店舗が担う文化的責任をあまり感じなかったんですが、群馬は店舗数が少ないから、一店舗が担う責任の大きさを感じます。だから浮わついた気持ちでお店をやっていたらいけないなと思ったし、もっと総合的にお店を展開したいという気持ちも芽生えて“村”を作ろうと思ったんでしょうね。

―1995年から28年間、お店を続けるのはすごいことですね。

オザワ 24歳のときにお店を出してから、ずっと辞める気がないので続いているだけなんですけどね。たぶん、事業をされているみなさんは何かあったときに辞めるかどうか検討されるんでしょうけど、私は「辞める」という選択肢が一切ないんです。だから仕事も私生活も含めて、すべての中で「JAMCOVER」を最優先にしています。そうすると判断が簡単で、続くことが当たり前だと思っているから、大変なことがあっても辞めるという考えに至らないんです。

―そのマインドの源は何なのでしょうか?

オザワ 仕事が好きだからかな。私はかなりのワーカーホリックなので。だから仕事が増えても全然構わないし、休みたいとも思わないから、365日働いているんです。

おやつ店の店内。厨房で作られた焼き菓子や自家焙煎のコーヒー豆、シロップ、ジャムなどがずらり

アイデアのパーツを集めて 形にすることが好き

―そもそも、なぜ雑貨店を始めたのですか?

オザワ 当時は“アーティスト雑貨”というジャンルや“雑貨アーティスト”という肩書きがなかったので、そのふたつを定着させようと思ってスタートしました。お店を始める前に雑貨のプレス的な仕事もしていたので、そこで知り合った雑誌関係の方やスタイリストさんたちに「JAMCOVER」を応援してもらえたことが大きかったですね。みんな商品を借りてくれて、雑誌に商品や名前が載ったりして。そういう方たちやお客さまに支えられながら、オープンして4年ぐらい経ったころにはお店が回せるようになっていたと思います。

―今後やってみたいことはありますか?

オザワ 幅広い年齢層が楽しめることをやりたいと思っています。たとえばキムチなどの発酵食品とか、日本や海外の食文化の研究をしていきたいですね。同時に、このあたりは果物や野菜がけっこう採れるので、それをどう加工していくかも考えていきたいです。あと、少し非現実的なところで言うと、近くにあるゴミ処理場の余熱や水力などを利用して、果物やカカオなどの栽培もできたらいいですね。そういうアイデアのパーツを少しずつ集めていって、できることからやってみてもいいのかなと思っています。そしていずれは「高崎=〇〇」と言えるようなものを作れたら次世代に残せるし、うちがやる意味があるのかなと思うんです。雑貨とは全然関係ないんですけど、そういうことを考えるのが好きなんでしょうね。それを考えるだけじゃなくて、どうにか実行できないかと工夫することが、私の元気のもとなんじゃないかな。

オザワリエさん
群馬県榛名町(現高崎市)出身。1995年東京・下北沢に「JAMCOVER」を、2008年高崎市に2店舗目となる高崎店をオープン。2011年に1店舗目を下北沢から馬喰町に移転しEast tokyo店とする。2017年に高崎店とEast tokyo店を統合し、雑貨店、おやつ店、トイレ棟、アトリエ棟、ガーデンを有する「JAMCOVER VILLAGE」を設立。著書に『JAMCOVERの雑貨とおやつ』(アノニマ・スタジオ刊)がある

JAMCOVER VILLAGE

群馬県高崎市下室田町1686

027-384-4470(雑貨店)

定休日:なし

JAMCOVER

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次