【特集インタビュー】cafe & marche nōfu・小林郁子さん/柴崎農園に誕生した 食・農・人が集う場所

高崎市柴崎町にある柴崎農園は、長年、地域の幼稚園や保育園の給食に、新鮮な野菜を届けていました。そんな柴崎農園が昨年、敷地内に「cafe & marche nōfu」をオープン。なぜ、朝採れ野菜がいただける農家レストラン&採れたて野菜直売所を作ったのでしょうか?

柴崎農園内に誕生した 農・食・人が集う場所

−−昨年10月26日に「cafe & marche nōfu」をオープンされたきっかけを教えてください。

小林 両親と一緒に営んでいる柴崎農園で収穫をしている時に、「寒い中、手をかじかませながら重たいキャベツを採って、1個150円で売る以外に方法はないか」と思い悩んでいて。それを300円で売るために、加工しようと思ったのがきっかけです。さらに、加工したものをほかで売ると手数料を取られてしまうので、自分たちで売ろうと思いました。

−−それで農家レストラン&野菜販売所「nōfu」を作られたのですね。

小林 ここは宅地ではなく農地なので、本当はお店を建てられないんですよ。でも“農家レストラン”なら許可が下りるということで、このような形になりました。ただ、お店を作ろうと思ったタイミングで、世の中がコロナ禍になってしまって。コロナ関係の補助金を調べていたら、建物を建てる際に使える補助金があったので、申請したら通ったんです。お店を一から建てるのはすごくお金がかかるので、補助金に助けられました。

−−建てる際にこだわったポイントはありますか?

小林 お客さまが入りやすいお店にしたいと思いました。地域の人たちがふらっと寄ってお茶を飲めるような、あまりおしゃれすぎず、お客さまの間口を狭めないお店にしました。

−−たしかに老若男女いろんなお客さまがいらしたり、先ほど小林さんのお子さんもお店に帰ってきたりして、入りやすいですよね。

小林 お店を持つことによって、娘が学校帰りに寄ったり、お友達を連れてお店で宿題したりできるところもよかったですね。

広々とした店内。入口付近では野菜やドレッシングなどを販売している

朝採れ野菜を使ったメニューや 販売している商品について

−−柴崎農園で栽培された野菜を使って調理されているんですか?

小林 そうですね。朝、隣の畑で収穫した野菜を、営業が始まるまでに仕込んで出しています。

−−メニューはどのように決めたのでしょうか?

小林 食材の味を活かしたメニュー構成を目指しています。たとえばいまの時期だったら、キュウリやミニトマト、大玉のトマトをどうしたらおいしく食べられるか考えますね。食材がおいしいので、あまり手を加え過ぎないことを意識しながら。

−−ランチメニューの「ごはんランチ」や「高崎生パスタランチ」には、サラダやスープ、たくさんの小鉢がついていて、野菜が摂れそうですね。

小林 小鉢は、近所にある群馬県立高崎高等特別支援学校で焼いてもらった器を使っています。最初、フードメニューは「ごはんランチ」だけにしようと思っていましたが、高崎の人はやっぱり麺が好きだと思ったので、「高崎生パスタランチ」も出すことにしました。高崎産の小麦「きぬの波」を使ったジャパスタリアという麺を友人が作っているので、取り寄せて調理しています。

メインのおかずのほか、「nofuサラダ」やごはん、スープ、多数の小鉢がついた「ごはんランチ」1,800円
朝採れ野菜を使って作る「nofuサラダ」

−−「nofuサラダ」はボリュームがあるのに、420円と手ごろな値段で驚きました。

小林 サラダって、お店で注文するとわりとお高いですよね。でも、420円ぐらいだったらお客さまが気軽に頼めるかなと思って。

−−「nofuサラダ」についているドレッシングは、店頭で販売しているドレッシングと同じですか?

小林 「nofuサラダ」にはもともと少し味がついていますが、ミニトマトを使って作った生のドレッシングもお付けしています。店頭で販売している「オリジナルミニトマトドレッシング」は、日持ちするように加熱処理してあるので、お店でお出ししているものとは違うんです。これから玉ねぎの季節になるので、トマトドレッシングと一緒に玉ねぎのドレッシングも店頭に並ぶ予定です。

−−トマトは柴崎農園のいち押しなんでしょうか?

小林 いち押しです。いま流通しているトマトは固玉が主流ですが、柴崎農園で作っているサンロードという品種は、酸味があってやわらかくて、つるんと食べられます。「サンロード」は病気に弱いし、量もあまり採れないから栽培しづらいんですよ。それで新しい品種に変えたこともありましたが、常連のお客さまの希望があって作り続けています。

隣の畑で栽培しているトマトは「サンロード」という品種

栽培の楽しさが高じて「nōfu」を開店することに

−−柴崎農園はいつ創業されたんですか?

小林 父はもともと農家と並行して別の仕事もしていましたが、脱サラして専業農家になったのが平成元年なので、36年ぐらい前です。

−−小林さんはいつから農業を手伝っていますか?

小林 15年ぐらい前からですね。農業1本になったのは娘を出産したあとで、8、9年前です。子どもを3、4歳までは自分の手元で育てたかったので、作業場に砂場を作って、砂遊びをさせながら作業していました。そうしたら、野菜を作るのがどんどんおもしろくなってしまって。野菜の苗がシャキンと育った時の達成感がたまらないし、うれしいんですよ。農業にはまっていくうちに、「nōfu」まで建ってしまったかんじでしたね。

−−料理もお好きだったのでしょうか?

小林 料理というより、食べることが好きです。それもあって加工を始めましたが、加工するだけだと時間ばかりかかっちゃって。それなら採算が取れるようにちゃんとやろうと思って、お店を作る時に1年間学校に通って、調理師免許を取得しました。妹はもともと免許を持っていたんですけどね。

−−今後の展望はありますか?

小林 たくさんのお客さまに「nōfu」に来ていただきたいです。あとはイチゴが好きなので、いずれハウスを建てることができたら、イチゴをたくさん作れるといいなと思っています。

小林郁子(こばやし ふみこ)さん
1979年生まれ、群馬県高崎市出身。調理師、食育インストラクター、介護食士3級。
出産後、子育てと並行してご両親が運営していた柴崎農園を共同で営む。
2022年10月、妹の匡世さんとともに「cafe & marche nōfu」を柴崎農園の一角にオープン

cafe & marche nōfu

群馬県高崎市柴崎町1642-2

027-335-8207

営業時間:お昼11:00〜14:00(L.O.)、お茶14:00〜17:00

定休日:日、祝、不定休(農休あり)

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